セクター:素材
インダストリーグループ:化学
主に北米と南米の産業向けにガスを供給する企業。酸素や窒素、アルゴン、稀ガスなどの大気ガスと、二酸化炭素やヘリウム、水素、電子ガス、アセチレンなどのプロセスガスを生産・販売する。また、金属とセラミックのコーティング材および粉末なども提供している。
銘柄分析の概要
「利益は意見、キャッシュは事実」と言われるように利益は粉飾しやすいが、キャッシュフローは誤魔化しにくい。そういうわけで、キャッシュフロー(事実)に着目した分析を行う。分析対象のデータ(2018年8月現在)はモーニングスターから入手した。プラクセアーのトータルスコアと投資判断の結論だけを知りたい方は、「チェックポイントのまとめと投資判断」をご覧ください。
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1株当たりのお金の流れ(目次に戻る)
ここでは「Market Hack流の銘柄の斬り方」を参考に分析を行う。Market Hack流の銘柄分析では、決算書で報告される「1株当たりの利益(意見)」と「1株当たりのお金の流れ(事実)」の関係にフォーカスする。具体的には、以下の4つの関係に注目する。
- 1株当りの売上高(事実)
- 1株当りの営業キャッシュフロー(事実)
- 1株当りの純利益(意見)
- 1株当りの配当金(事実)
売上高 > 営業キャッシュフロー > 純利益 > 配当金継続的に純利益(意見)が営業キャッシュフロー(事実)よりも大きくなっているような場合は、何かしらの会計的な操作により利益を過大に報告している可能性が考えられる。また、長年にわたり配当金(事実)が純利益(意見)よりも大きくなっているような場合は、配当政策の安定性と持続性の観点で疑問が残る。
持続可能性の観点では、理想的には企業が毎年稼ぎたしたキャッシュの範囲内で配当を実施することが望ましい。逆に、資産の売却や返済能力を超えた無計画な借り入れなどに頼って配当を実施していると、遅かれ早かれ破綻してしまう。このような企業は、元本を取り崩して無理やり分配金を捻出している毎月分配型ファンドと似たようなことをやっている可能性が濃厚なので、配当目当てで投資を行う際には要注意。
以上を踏まえた上で、プラクセアーの1株当たりの売上高、営業キャッシュフロー、純利益(EPS)、配当の推移を以下に示す。
売上高以外の3項目を比較したグラフは以下のようになる。
ここでのチェックポイントは以下の3点(「チェックポイントのまとめと投資判断」に飛ぶ)。
- 営業キャッシュフローが安定的に黒字化しているか?(右肩上がりになっていることが望ましい)
- 各年度の営業キャッシュフローが同年度の純利益よりも大きいか?
- 各年度の純利益が同年度の配当金よりも大きいか?
営業キャッシュフローマージン(目次に戻る)
営業キャッシュフローに焦点を当てると、企業が本業の営業活動からどの程度キャッシュを稼いでいるのか把握することができる。具体的には、企業がモノやサービスを売って得たキャッシュが売上高。そして、売上高から原材料費などの支出を引いた現金収支が営業キャッシュフロー、ということになる。
ここから営業キャッシュフローマージンを計算することになるわけだが、以下の計算式で算出することができる。
営業キャッシュフローマージン(%) = 営業キャッシュフロー ÷ 売上高 × 100業種によって事情が異なるので一概には言えないが、一般的には営業キャッシュフローマージンが高い企業は、競合他社と比べて高い競争優位性を持つ傾向がある。一つの目安として、営業キャッシュフローマージンが安定的に15%を上回っている企業は、競争優位性が高いと言える。
以上を踏まえた上で、プラクセアーの営業キャッシュフローマージンの推移を以下に示す。
ここでのチェックポイントは以下の2点(「チェックポイントのまとめと投資判断」に飛ぶ)。
- 営業キャッシュフローマージンが安定的に15%を上回っているか?
- 営業キャッシュフローマージンが競合他社と比べて高い値を維持しているか?
フリーキャッシュフローと配当性向(目次に戻る)
配当の持続性や成長性の観点からフリーキャッシュフローが安定しているに越したことはない。また、企業が稼ぎ出したキャッシュの内、どの程度の割合を配当として還元しているかを知ることは、配当の持続可能性を考える上で重要となる。一般的にメジャーな「配当性向」の計算では、当期純利益(EPS)のうち配当に回す割合を算出し、百分率(パーセンテージ)で表す。
この配当性向を確認することで、配当金の支払いの妥当性を評価することができる。例えば、配当性向が低いほど利益処分に余裕があることがわかる。逆に配当性向が継続的に100パーセントをオーバーしていると、配当金の支払いのためにどこかしらで無理をしている可能性が考えられる。つまり、配当の持続性が怪しくなる。
ここでの分析でも「利益は意見、キャッシュは事実」の原則に従い、利益(意見)の代わりにキャッシュ(事実)にフォーカスして配当性向を計算する。このために役に立つ指標として「キャッシュフロー配当性向」と呼ばれる指標がある。以下の計算式で算出することができる。
キャッシュフロー配当性向(%) = 配当支払額 ÷ フリーキャッシュフロー × 100以上を踏まえた上で、プラクセアーのフリーキャッシュフローと配当性向の推移を以下に示す。
ここでのチェックポイントは以下の2点(「チェックポイントのまとめと投資判断」に飛ぶ)。
- フリーキャッシュフローが安定的に黒字化しているか?
- キャッシュフロー配当性向が無理ない範囲に収まっているか?
配当金の年平均成長率(目次に戻る)
Show me the money(金をみせろ)
配当金とは、即ち、企業から投資家(株主)へのキャッシュフローである。企業から受け取る配当を最大化するための戦略として主に2通りのアプローチが考えられる。
- 現在の配当利回りが高い高配当銘柄に投資する。
- 将来の増配期待が高い低配当銘柄に投資する。
以上を踏まえた上で、プラクセアーの配当金の年平均成長率(CAGR)を以下に示す。
ここでのチェックポイントは以下の3点(「チェックポイントのまとめと投資判断」に飛ぶ)。
- 1株当たりの配当金が安定的に増えているか?
- 配当金の増配率が一定の水準を維持できているか?(物価上昇率(インフレ率)を超えることが最低ライン)
- 配当の利回りと増配率が自身の投資アプローチに適合しているか?
チェックポイントのまとめと投資判断(目次に戻る)
最後にプラクセアーへの投資を検討する際の足切り基準の一つとして、各項目のチェックポイントを活用する。具体的には、それぞれのチェックポイントを評価してプラクセアーのトータルスコアを計算する。ここでは簡易化のために、各チェックポイントを3段階(0点、5点、10点)で評価する。さらに、この評価結果を用いて、プラクセアーについて投資に値するか否かを判断する。最終的な判断基準として、トータルスコアが85点以上の場合は、投資候補として真剣に検討するレベル(1軍候補)。70点以上85点未満の場合は、投資候補として検討してもよいレベル(2軍候補)。そして、70点未満の場合は、あまり積極的に投資したくないレベル(3軍候補)とする。
- 営業キャッシュフローが安定的に黒字化しているか?(右肩上がりになっていることが望ましい) → 10点
- 各年度の営業キャッシュフローが同年度の純利益よりも大きいか? → 10点
- 各年度の純利益が同年度の配当金よりも大きいか? → 10点
- 営業キャッシュフローマージンが安定的に15%を上回っているか? → 10点
- 営業キャッシュフローマージンが競合他社と比べて高い値を維持しているか? → 10点
- フリーキャッシュフローが安定的に黒字化しているか? → 10点
- キャッシュフロー配当性向が無理ない範囲に収まっているか? → 0点
- 1株当たりの配当金が安定的に増えているか? → 10点
- 配当金の増配率が一定の水準を維持できているか?(物価上昇率(インフレ率)を超えることが最低ライン) → 10点
- 配当の利回りと増配率が自身の投資アプローチに適合しているか? → 5点
プラクセアーに100点満点で点数を付けるとしたら、あなたはどのように評価しますか?そして、その点数は、あなたが投資を検討する上で妥当だと思う足切りラインをクリアできているでしょうか?もちろん投資に絶対的な「正解」はありませんが、ぜひ各自の投資スタイルに合わせたチェックリストを作って評価してみてください。
もしプラクセアーが投資に値すると判断した場合は、プラクセアーの現在のバリュエーションも確認してみましょう。バリュエーションはどんなときも重要です。たとえ100点満点の企業であったとしても、バブルの罠にはまって高値で買うのはNGです。バリュエーションの判断に関しては、プラクセアーが今週の割安配当銘柄の上位にランクインしているかどうかも1つの目安になります。
参考リンク(目次に戻る)
プラクセアーについてもっと詳しく知りたい方は以下のサイトが勉強になります(リンクをクリックすると外部サイトに移動します)。プラクセアーへ投資する前に一読することをお勧めします。
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このブログは情報提供のみを目的としています。投資はあくまで自己判断・自己責任でお願いします。